当院の訪問診療の特徴

同行看護師の事前訪問

皆さんはこんな経験はありませんか?

  • 先生が急いでいるみたいで質問できなかった
  • こんな質問をしてもいいのか迷って質問しなかった
  • お医者さんが苦手で質問できなかった
  • 最後に質問しようと思ってたのに忘れてしまった
  • 質問の仕方がわからなくて質問できなかった

もっとたくさんの理由があるかもしれませんが、とにかく医者というものは近づきにくく厄介な存在のようです。

この、ドクターに直接質問できないという場面は、訪問診療の場面では、ドクターと患者さま本人であったり、ドクターとご家族あるいはケアスタッフであったり、とにかくナースが不在の時には頻繁にみられます。

なぜこのようなことが起こるのかというと、いつも忙しそうにしていたり、声をかけられたくないオーラを発していたりするドクターにも問題がありますが、医者に声をかけていいのは「質問」のときだけ、と思い込んでいる皆さんの誤解にもあります。そして、この誤解が生じるのは、皆さんから声をかけられたドクターが質問されたら答えなければならないと身構えているのが見えるからでしょうね。

たしかに、「臨床医は、健康についてのよろず相談医」だとどこかでお話ししたような気がしますが、だからといって質問したり質問に答えたりするためだけの人間ではありません。

特に訪問診療においては、「総合家庭医」と自称していても、専門医や名医ではないので、一目見ただけで異常を見つけられることはそう多くはありません。むしろ、どんな些細なことでも気になることがあれば話していただいたほうが診療の助けになるというものです。それがドクターの専門外のことのように思えても、です。

従来訪問診療はドクター一人で行うものとされナースが同行することは義務付けられておりません。とはいうものの、今お話ししたように、ドクターが単独で診療に出向いても得るものは少なく、施設によっては訪問看護師が付いてくれることもありますが訪問看護師の業務でもないため厚意で付いていただいているのが現状です。

そんなわけで、当クリニックでは、訪問診療時のスタッフ(訪問診療コーディネーター)の同行に加えて、訪問診療の前に、ナースによる事前訪問というものを行っております。訪問看護の業務として行う場合もありますが、多くの場合は、サービス業務としてナース単独で訪問に出かけています。ナースが患者様のご自宅やお部屋に訪問して、血圧や脈拍や体温といったものを測り、ご本人やご家族、ケアスタッフの方々とお話をして情報を集めてきます。その情報やケアマネジャーからの報告をもとに、ドクターの診療にナースまたはスタッフ (訪問診療コーディネーター) が同行して伺うというものです。

この方法をオープン当初から始めて、一番に歓迎されたのは当クリニックのナースからでした。ドクターの訪問に付き添っても、せいぜいドクターが診察している合間にご家族やケアスタッフなどから情報を収集するくらいで患者様とお話しする機会はほとんどありません。単独で回ったときにはいろいろな世間話も聞けます。患者様は何でも話してくれるようです。時には「あの先生は話しづらいからねえ」とバッサリ斬られることもあります。とにかく、いろんな話を聞いて答えて信頼が生まれます。看護学校の実習生として患者様を受け持った当時のピュアな体験がよみがえります。患者様にとっても、他者との交流が増え、たとえつかの間であっても心と体の活性化が得られます。その積み重ねは、認知症の進行予防や介護度の重度化防止に功を奏することでしょう。

現状の介護現場で従事するナースに求められるのは、在宅看護論の習得と実践です。病院勤務の経験がいかに豊富であったとしても、在宅看護論を学び実践できる若いナースには及ばない時代が来ることでしょう。当クリニックでは、この在宅看護の実践指導を目指したいと考えています。

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