Dementia
医療と介護にまつわるコラム
認知症について
2010.7.15
慢性硬膜下血腫について 脳外科医には当たり前のこと?(2)
ここからは、日常診療の中で気づいた点を書き並べたいと思います。 脳外科医なら誰しも知っているんだろうなと思い、学会向けではなくもっと多くの興味ある人たちの目に触れるよう、ここに載せました。
慢性硬膜下血腫は1,2ヶ月の無症状の期間があるとお話しました。多くの例で正しいと思うのですが、慢性硬膜下血腫を早く見つけて、手術に至らないように予防することはできるのではないかと思います。
①まず、頭をぶつけたり、頭もぶつけたかもしれないと思ったらその時期に検査を受けておくことです。
お年寄りですと、この段階で、今後の予測がつくことが多いのです。本来慢性硬膜下血腫は前で説明したように、最初から出血は目立ちませんから、CTやMRIで血腫が見つかるはずはありません。 この段階で見極めたいのは脳の萎縮がどの程度あるかということです。前頭葉や側頭葉の萎縮が強くすでにそこに髄液のスペースができている人では、あとから血腫がたまってくる確立が高くなります。こういう人は2週間後にもう一度検査に来ていただくと、症状が出る前にすでに血腫がたまってきているのが見つかります。この時点で了解を得て入院していただくことがありますが、早期に診断して早期に入院治療を行った症例では手術に至った例がありません。 この時期に血腫が見つかり外来的に経過を追った例では、さらに血腫が増大して入院治療を行っても、手術をせずに済んだ例がほとんどだったように思います。 症状が出現してしまってから受診して検査で血腫が見つかった場合は、すでに血腫が脳を圧迫してしまっているので手術になることがほとんどです。 症状が出る前に、あるいは軽い頭痛程度のうちに入院したら止血剤を点滴します。
②受傷後比較的早期から硬膜下水腫と呼ぶべき状態を示す人がいまして、この硬膜下水腫が後に慢性硬膜下血腫になることがあります。
慢性硬膜下血腫のCT画像診断では4つのタイプがあるとテキストには書かれています。 1. 低吸収域型・・・CT上脳実質の色より黒い血腫
2. 等吸収域型・・・CT上脳実質と同じグレーの血腫
3. 高吸収域型・・・CT上脳実質の色より白い血腫
4. 混合型・・・黒、グレー、白が混在した血腫 (水平に鏡面を形成する血腫は特に鏡面形成型と呼ぶ) です。
このうちの1.のタイプは、CTでは水とみかけ上変わらないのですが、MRIで検査をしてみると、血液が混ざっていることがわかります。 私が思うに、テキストにあるように頭痛、歩行傷害、意識障害、などの症状が出現する以前に、すでに慢性硬膜下水腫が形成されそれが2型3型、あるいは4型のタイプに移行していくのではないかと思います。おそらくテキストに書かれている1型の慢性硬膜下血腫というのは、無症状のうちに見つかったもの、それ以外のタイプは症状を伴うタイプだと想像します。1.のタイプで手術に至る例はありません。2.、3.、4.のタイプにしても、血腫がある量に達しなければ症状は出ませんし、その前なら手術をしなくても安静治療で血種をなくすことができると思います。
③抗凝固剤や抗血小板剤を服用中の人は要注意です
心疾患や脳血管疾患の既往があって再発予防のために抗凝固剤や抗血小板治療薬を服用していると、軽微な頭部外傷でも慢性硬膜下血腫になりやすいし、血腫が進行増大する傾向があるし、治療後の吸収消失にも時間がかかる、と言えるようです。
若い人の慢性硬膜下血腫では、手術をすると術後に残った血腫も2週間ほどで消失し再貯留の心配もほとんどありませんが、高齢者になるに従い、脳の「戻る力」が衰え、術後の残存血腫の量も多く、量が多いほど再貯留の危険度が高くなるようです。再貯留の防止には、安静が指示され、「飛んだり走ったりしないように」ときつく注意されますが、高齢者ではそれでも再貯留を起こすことも少なくありません。そのため、私は高齢者については、ある程度の血腫量になるまで治療を続けて退院していただくのですが、そうするとほぼ60日間の入院が必要になります。ところが、抗凝固剤や抗血小板治療薬を服用中ですと、60日の入院が90日に延長されてしまいます。入院が長くなるだけコストパフォーマンスが悪くなる今の保健医療で、こんなに長期の入院管理をするところはほかにはないかもしれません。でも、二十数年間、慢性硬膜下血腫の治療は変わっておらず、私が見た最初のころの患者さんには短期間の入退院で3回もの手術を繰り返した例もあります。最近でも、大病院の脳外科で手術をして1週間で退院し、4週間後には再度手術が必要かもしれないくらいの再貯留を認めて入院して安静治療を行いましたが、抗血小板治療薬の服用を中止できなかったため、さらに3ヶ月間の治療期間を要した例もあります。
※最近は、漢方薬(五苓散)を服用してもらっています。
④慢性硬膜下血腫の中に、新たな出血を繰り返している人がいるらしい
慢性硬膜下血腫がある程度の量になってくると転倒しやすくなります。転倒してまた頭をぶつける人がいます。そうして血腫の貯留のスピードが増して、急に悪くなって外来につれてこられます。CTやMRIで見ると、明らかに慢性硬膜下血腫の血腫スペースに、凝血塊と思われる塊が存在します。こうした例は、当然手術になるわけですが、術後の血腫の除去具合に不満が残ります。チューブから抜けてこないのです。 こうした例は、上記の薬を服用している人に多いような気がします。
いずれにしましても、頭をぶつけたらなるべく一度は検査を受けておきましょう。 硬膜下に隙間があると言われたら、数週間後にもう一度検査を受けておきましょう。 異常なしと言われても、1,2ヵ月後になんとなく頭痛が気になりだしたら、検査に行きましょう。頭痛だけならまだ間に合います。 認知症というのは突然始まるものではありません。急におかしなことを言い出したら、検査を受けましょう。その中には慢性硬膜下血腫が見つかる例もあるでしょう。
by T
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