Journal
医療と介護にまつわるコラム
くどくど言わずに…
まずは一献
2007.3.1
大切な先輩を亡くしました。
私に、手術のコツを伝授してくださった、大切な先輩でした。
59歳でした。あまりに突然の訃報でした。あまりに若い死でした。
いつもにこやかで、若大将のような人だ、とひそかに思っていました。テニスの似合う好青年でした。
彼の、葬儀は密葬で親族のみで執り行われたそうで、先日、お別れの会と称して、仲間内で別れを惜しむ機会がありました。
私は土曜の診療がありましたので、終わってから急いでタクシーで駆けつけましたが、後10分遅かったらもう終わっていただろうと思われるほど遅刻してしまいました。会場の前にタクシーをつけてもらって降りようとしているところへ、同門会長のN先生が出て来られました。
「先生、もう終わっちゃいましたか?」
ばつが悪そうに声をかけた私に、先生は、
「おう、いま、けんかしているぞ。まだ間に合うから行ってみな」
そう言い残して行ってしまわれました。
「けんかしてるって、どうしてこんな時に?」
私が返した言葉は冷たい木枯らしに吹き飛ばされて、先生の耳には届きませんでした。
(密葬なんて水臭い、って仲間内で口論になってるのかな)そんなことを頭の中でめぐらせながら、会場に入っていくと、目の前には今にも片付けようとしている受付があり、その横の奥まった会場では、次々と参列者が前に進んで御焼香を済ませている様子でした。
私は、お花料を出して領収書を書いているかつての職場仲間にイライラしながら、その参列者の列に早く加わろうと焦っていました。
領収書をもらって急いで参列に加わると、案の定私は最後尾。
白い菊の花を1輪いただいて、祭壇の前に捧げ、先輩のにこやかに微笑んでいる御遺影に手を合わす・・・。
思わず私の口から漏れた言葉。・・・先生、早すぎます。
ご遺族に会釈して席に着き、しばらくして気が付いた。
「けんか」は「喧嘩」じゃなかったんだ。
「献花」かあ。
N先生、発音が違ってますよう。
先輩、いつも朗らかで、周りを笑わせてましたから、こんなお別れの挨拶も、大目に見てやってください。
いずれまた逢える日が来ますように。
そのときは、
迷子にならないように、迎えに来てくださいね。
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