Journal
医療と介護にまつわるコラム
くどくど言わずに…
まずは一献
2006.10.28
同じ医療従事者として
「脳梗塞の新薬で48名が死亡」記事、残念でなりません。t-PA製剤、実にすばらしい注射薬なのです。脳梗塞にかかわってきた医者が、どれほど待ち望んできたかわからない、「血栓だけを溶かす」薬。欧米ではすでに使われその実績も報告されていたし、日本でも心筋梗塞の急性期治療薬としてすでに使用経験も報告されてその有効性は実証済みでした。 脳動脈閉塞に対する治療成績では、血栓溶解と出血は背中合わせで、それゆえに国内では欧米よりさらに厳しい適応基準を設けて慎重な使用を呼びかけてきました。脳梗塞の血栓溶解剤として発売される直前には、講習会に参加した医療機関のみに使用を許可するというキャンペーンも全国展開され、6ヵ月後の段階では出血による死亡報告は数名(8名?)だったと記憶しています。それから数ヶ月、出血性脳梗塞で48名もの死亡報告が挙がっているという、この事実はいったい何なのでしょうか?
適応基準はアメリカよりも厳しかったにもかかわらず。 本当に適応規準を遵守した結果なのでしょうか?発症から3時間以内の投与開始、という基準に対して、2時間59分と報告した症例もありました。適応症例を待ち望む気持ちがなかった脳外科医はいなかったでしょう。その気持ちの表れが「2時間59分で適応あり」だったのかなと思うのです。あれほど慎重に、出血性病変で死亡する例が多ければこの薬は日本では日の目を見ないと再三訴えていた学会があったにもかかわらず、この使用症例数とこの死亡者数は残念でなりません。
3200分の48が死亡率、ただ統計的に数字を挙げたらこんなものかもしれません。しかし、数字だけの問題では済まされないのが人命です。「理想的な夢の治療薬」、そう呼べるのは、限りなく死亡0であってこそです。 出血を起こしても死亡しなかった症例もありました。いったいどれだけの出血例があったかというと、3200分の488。ここが重要なのではないでしょうか。
私はこの薬を危険薬剤として排斥しようとしているのではありません。この薬に限らず、新薬は時を焦らず、安全に確実に使いたい、それが私の願いです。 本当の「夢の治療薬」になってもらいたいと願います。
by やぶれがさ
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