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医療と介護にまつわるコラム

くどくど言わずに…

まずは一献

2006.10.11

○○さん、試合観戦してきましたよ

これは2006年、北海道日本ハムファイターズが初優勝を飾った年の心に残ったエピソードです。

 あなたからいただいた、プレーオフ第2ステージ第1戦、日本ハムファイターズ対ソフトバンクホークスの試合のチケット。万難を排して、行きたがっている妻の手も振り払って(うそです)、観戦してまいりました。

 「あ、○○さん、11日にご主人の退院が決まりました、良かったですね」 「アラ、良かった、ありがとうございます、11日、・・・えっ、11日?・・・アラ、まずい、どうしよう」 「えっ、まずい?どうかしましたか?」 「あ、いや、いいんです、11日ですね・・・11日って、あれあるでしょ、第2ステージ第1戦。私、チケット4枚手に入れたの、それでお友達と二人で行こうと思ってたの」 「えっ、それいいなあ、うちの者が聞いたら羨ましがるなあ、がんばったけど完売してしまったって言ってたから」

 「2枚余ってるから、あげようか、オークションに出してお小遣い稼ごうかって冗談言ってたところだから」 「あ、良かったらぜひ、でも、本当にいいんですか、プレミア付いてるんでしょう?」 「ああ、いいの、いいの、日ごろお世話になっているのに、こんなことでもなかったら・・・」 売ってください、あげるよ、いいえそれは困ります、の押し問答を繰り返した末、結局ただでもらってしまった「南ゲートCゾーン29通路40列181番と182番」 。ところが、「いいの、いいの、日ごろお世話になっているのに、こんなことでもなかったら・・・」という言葉にはある策略が隠されていたのです。

 皆さんは、チケットが4枚、うち2枚は本人が使う予定で2枚は余っている、と思ったに違いありません。誰しもそう思ったはずです。コロンボも、古畑任三郎も、ホームズも、そしてコナンも(なんで彼らが出てくるんだ、余計に話がこんがらかる)。私も、そのときの彼女の表情の変化を見抜くことができなかったのです(未熟者!)。「11日・・・アラ、まずい」と言った時、あんなに素直に戸惑いの表情を見せた彼女でしたが、「2枚余ってるから、あげようか」、そのときは微塵も表情を変えなかった。 けれども、4枚チケットを入手したので2人で行こうと思っている、じゃあ2枚残っている、そう解釈したのはこちらの勝手でした、というより彼女は咄嗟にそう思わせぶりな返事をしたのでした。 「余っているチケット、もし売ってもらえるなら、家族に行かせたいんだけど、いかがですか」「いいよお金は、オークションは冗談だから、あげるから使って」 「11日にお父さんが退院するなら、私も行けないし、お友達には事情を話せばわかってくれるし」

 「えっ、だってチケットは2枚別に余ってるんでしょう?」 「ああ、2枚はすでに姉妹にあげたの、だから・・・いいの、私はTVで観ればいいんだから」  日ごろお世話になっているのに、こんなことでもなかったら・・・その言葉の意味するところが、ここにあったのです。 私がチケットを欲しがる様子をすばやく見て取ったのでしょう。だから、退院の日を変えて欲しいと申し出るより、チケットを手放すほうを選んだのでしょう。

 日ごろお世話になっているから・・・。 私の「お世話」は仕事です。何も特別の形でお礼されるべきものでもありません。ちゃんと報酬もいただいています。感謝されるだけでこの上なく嬉しい。反対にいくら報酬をもらっているといっても、当たり前の顔をされると、やはりカチンとくるのです。なぜなら、必死だから。

 話が横道にそれましたが、とにかく、私はまんまと彼女の策略にかかってチケットをただでもらう結果となってしまったのです。 「チケットが取れなかったって聞いたときに、(ああ、今車まで戻ればチケットを持ってきてあげられるのに)と思ってたの、どうやって手渡そうかとそれしか考えてなかったの」、そう言われて胸が熱くなりました。 こういう方たちと触れ合う機会が多いと、心が年をとらない(?)みたい。 いつも、愛に触れていると、心が年をとらないらしい。 いまさらご主人の退院を延期しましょうなんて言ってみたところでチケットを返せるわけもありません。 軽はずみなことを言ってしまったものだ、と後悔は先に立ちません。 そうとなれば、・・・私自身がチケットを使ってこそ、○○さんのご好意にお応えできるものと・・・ 行ってきました、札幌ドーム。 観てきました、プレイオフ第2ステージ第1戦。

 感謝の証に今もこのまま残しています。

                            by やぶれがさ

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